3、竈(かまど)
トイレを出てすぐ客間の入口に何故か「かまど」が鎮座している。
昔はこんな玄関先で調理していたのかな?と思い「変わった場所で煮炊きしていたんですね」と尋ねたところ
「これはねぇ先代が変形しない木地を吟味して使わないと良い輪島塗は出来ないと言い張り、納品されたばかりの椀木地をこのかまどにセイロを何段も積み上げて蒸気による熱で変形しない物だけを吟味して使ってた名残なんですよ」
との答えが返ってきた。
確かに木は生き物だから反ったり曲がったりするのが当たり前だと思うが、それを加熱して強制的に変形するものを選び出し選別するとは常人には想像もつかない話である。
もちろん当代はそのような事まではしてはいないがそんな輪島塗に対する狂気とも言えるほどのこだわりこそが大崎庄右ェ門の漆器哲学の神髄だと私は感じた。