10、地鉢とスリコギ

職人さんらの傍らに黒くて大きな鉢のような入れ物が置いてあり、その中に肌色に近い色の何かが入れてある。
これは「地鉢」と言われる輪島塗で使う「のべ漆」を入れておく容器だと言うが、なかなかどうして良い形なのである。

この「のべ漆」は女将の手作りの糊と漆を調合し、「地の粉」とよばれる輪島独自の珪藻土の焼成粉末と調合して使うとの説明を受けた。

漆のみだと粘度が出ないだの定着が悪いだの諸説あるらしいのだが、御当地輪島では漆器作りには欠かせないものだそうです。

しかしこの使い込んだ艶は何ともいえず上品でこのまま器にしてしまいたい位である。
感心して眺めていると、これが糊と漆を合わせる時に使うスリコギですよ。と女将が手渡してくれたのが、これまた使い込まれ底光りを放つスリコギだった。